かけ離れた世の中の未来

選挙が始まるらしい。

 

お恥ずかしい話、就職してから選挙というものに行ったことがない。

大学は法学部で、しかも政治学科だってのに。

 

こう見えても国際政治とか、そこそこちゃんと勉強してて、ちょうど大学生の時はまだ当時の民主党が与党を奪取する前の安倍政権とかで、「美しい国へ」とか出版された直後だった。

 

ジョセフ・ナイとか藤原帰一とか、新書だったり、教科書だったり、あまり大学の授業に行かずサークルにも参加せず、適当に引きこもって本ばっか読んでる自分にとってはそこそこ分厚くて、しかも読み物としてもノンフィクションのストーリーとしても面白い政治学の本を図書館だったり駅近くのドトールでせかせかと読み漁っていた。あれはあれで楽しい時間だった。

 

マックスウェーバーとか、ハンナ・アーレントとかシュンペーターとか、原書は難しくて全然理解出来ないんで、要約してある新書ばっか読んで分かった気になってた。その方が簡単だったし。当時から、楽して要領よくやり過ごそうとする気質は変わっていないみたいだ。音楽もそう。難しいヤツ聞いても自分の頭じゃ全然いいと思えないんで、レビューとか解説の記事読んで、「そんな感じ」とふわっと理解する程度に納めてしまう。でも、学者でもなければ天才でもないんで、その辺りで落ち着かせる方がいいと思っているけど。

 

で、選挙に最後に行ったのはちょうど麻生さんが大敗して民主党に与党第1党を奪取された時くらいで、その後は仕事が忙しくなったてのと、住民票を実家のまま移していなかったので、わざわざ実家に帰って投票しに行くってのが面倒くさかったというのが主な理由である。かれこれ8年くらいは参加していない。

 

なんで、そんな話を書いたのかというと、2冊の本を読んだからで、竹中平蔵さんとライフネット生命出口治明さんの対談の「人生100年時代のお金の不安がなくなる話」と佐々木紀彦さんというNewsPicks編集長の「日本3.0 2020年の人生戦略」という2冊。

 

どっちも、この先の日本は一体どうなるの?ってのを主観を交えつつ体系的に語っていて、前者は中長期的な視点、後者は東京オリンピックまでの短期的な視点を中心にしつつ、その後の在り方についてまでを語っている。

 

 

「人生100年時代のお金の不安がなくなる話」は結構明るく前向きな未来像が描かれていて、若い人は就職しても、一生涯生活していける定収入を得れるのか、とか、年金はもらえないのにどうして払い続けて自分達は貧乏にならなきゃならないのか、とか漠然とした人生に対する「不安」みたいなものを抱いているけど、そもそも戦後を生きた世代ではまだ年金という制度自体が整備されていなくて、年金がもらえない生活が前提だったのだし、イノベーションが起きて、今自分がやっている仕事がそのまま何十年後も在り続けるのかなんて未来を今から予測すること自体が不可能なのだし、つまりは、強く賢くなくても変化に対して柔軟に対応できる人が生き残る社会になる、ということを前向きに捉えて、やりたいことは今すぐ始めよう、「明日死ぬと思って生きよ。永遠に生きると思って学べ」ということが書いてあった。

 

要はそんなに悲観するなってこと。

「悲観は気分。楽観は意志である」というアランの『幸福論』の言葉がそれを象徴していると思う。自分が何をしたいのかを考え、成功するまで続けることが大事だと書いてあった。

 

日本3.0 2020年の人生戦略 (幻冬舎単行本)

日本3.0 2020年の人生戦略 (幻冬舎単行本)

 

 

対して、「日本3.0 2020年の人生戦略」は戦後以来のレジームの大転換が2020年を境にやってくることを予期し、国家、経済、仕事、教育、リーダシップとジャンル別に日本の未来を定量的なデータから予測している。

 

ざっと本の中に要点がまとまっているのだけど、挙げるとこんな感じ。ちょっと長いけど。でもどの要素も読んでみると納得できる。

 

【国家】

国民国家がなくなることは今後もない。むしろ復権する可能性が高い。

国民国家がなくなった後に、平和が訪れないことを人々は悟っている。

・「アラブの春」の教訓。インターネットは壊すのは上手だが、創るのは苦手。

・世界は「最も危険な時代」を迎えようとしている。特に東アジアは危険。

・同質性、島国、天皇などの条件が揃う日本は、特に国の磁力が強い。

・今後、世界は更に多様化。国家は主に6つのモデルに収斂していく。

・国内政治は、「政治の大きさ」「GlobalとLocalの考え方」などにより4勢力に分かれる。

保守主義と伝統主義は違う。「真の保守主義」を再定義しなければならない。

・「リベラルイノベータ」層が新たに誕生。都会をベースに勢力を拡大する。

・日本人の拠り所は、個人、家族、国家の3本柱と、会社、地域、宗教。

 

【経済】

・日本経済は、2030年までにインドに抜かれて世界4位に後退。

・人口が減少する中で規模を追うには限界がある。量より質で勝負。

・日本は今も世界屈指のイノベーション大国として認知されている。

・AI、ロボット、IoT、ビッグデータによる第4次産業革命が起きる。

・日本に有利なのは、ロボット、IoT分野。AIでの勝利は難しい。

・HWとSWの融合に日本のチャンスがある。

・日本企業が成功するカギは、日本の東海岸と西海岸の融合にある。

・世界のスタートアップブームは一服。日本のスタートアップは岐路。

・レンタル社員導入制度と、エリート育成、海外組選抜を急ぎべき。

・老人経営者の淘汰が急務。40代以下のトップリーダ登用も急務。

 

【仕事】

・AIの浸透により仕事を失うのは「事務職」と「なんちゃって管理職」

・大企業はもっと小さくなり、7つの機能に集約されていく。

・グローバルリーダ、ナショナルリーダ、ローカルリーダという3つの生き方。

・これから日本社会でリーダになる人には、10通りの生き方がある。

・大企業でもイノベーションは起こせる。ただ、出世との両立は難しい。

・大企業での新たな出世コースは「海外」「M&A」「新規事業」。

・スタートアップで働くなら、創業者の「能力」「ビジョン」「欲望」を見よ。

・ローカル企業でも豊かなキャリアは可能。企業選びには2つのポイントがある。

・グローバルリーダを目指すのであれば、グローバル企業で働くのが近道。

・両利きのキャリアの時代。ひとつの分野を研ぎ澄ますとともに、多動であれ。

 

【教育】

・日本の高校までの教育は世界トップレベル。2020年の改革で更に進化する。

・日本の教育の最大のガンは大学である。東大もついにアジアトップの座を失った。

・「日本3.0」時代の大学教育のカギは、教養教育。日米エリートの差も教養にある。

・まず学ぶべきモデルは、ハーバード、スタンフォードなどの一流大学の教育。

・教養を高めるには「知の千本ノック」が不可欠。徹底的に読み、書き、話す。

・ハーバードの最新の教養教育。3本柱は「外国語」「説明文」「8つの一般教養」。

スタンフォードが目指すのは「T字型人間」。哲学、文学から生物学、ITまでを網羅。

・明治の志士は、西洋と東洋の智恵を兼ね備えた、ワールドクラスの教養人だった。

西郷隆盛大久保利通東郷平八郎を生んだ薩摩の郷中教育にヒントがある。

・「日本3.0」の教育が目指すべきは、世界最先端の教育と、日本古来の教育の融合。

 

【リーダー】

・日本からリーダが生まれないのには3つの理由がある。

・日本の村社会化が進んでいる。ネットがムラ化にさらに拍車をかけている。

ボトムアップでの改革は不可能。改革期には「決断型のリーダ」が不可欠。

・若い時からリーダ経験を積ませ、遅くとも30代でリーダ候補を選抜すべき。

・ワールドクラスの教養を磨け。リーダにこそアートが癒しになる。

・疑う力。クリティカル・シンキングこそが、イノベーションの源泉になる。

・自己愛の強い人はリーダになれない。失敗と恋愛こそが、人間を育てる。

・説得力を高めるには、エトス、ロゴス、パトスに訴える「弁論術」を習得せよ。

・「孤独を愛する力」から、逆張りする勇気と批判に耐える力が湧いてくる。

・日本を背負い、世界に挑む。「コスモジャポニズム」を持つリーダを。

 

すごくたくさんの論点があるのだけど、全部的確だし、把握しておくべきなので、敢えて全部列挙した。これはを踏まえ、「最後の青春」である30代にもっと貪欲に攻めて、暴れてほしいと説いている。その方が日本がよく変わるから。なので、「人生100年時代のお金の不安がなくなる話」はこれから本格的に仕事を初めていく20代向け、「日本3.0 2020年の人生戦略」は少し社会のことがわかって、これから中心を担っていく素養と意志を持つであろう30代に向けた内容になっていた。

 

この2冊を読んで、ちょっと自分の日常とはかけ離れているな、と感じたのが正直なところ。

 

だって、やりたいことを仕事で実現しろとか、これから日本はこうなる、とか世界がどう変わるとか、読んでて全然ピンとこない。何か実感が湧くのであればすでに選挙に行ってるし。国政だろうと自治体だろうと政治に参加しているし。

 

なんか、このギャップを埋めないことには、このままずーっと選挙に行かないんだろうなと漠然と思ってしまった。

 

だって、そもそも何でそんなに将来に「不安」を感じているのだろう?

なるようにしかならないのだし、大きな理想を持つからその分失望した時のギャップも大きい。結局なるようにしかならないし、金銭的に不安なのは多くを望み過ぎているからなんじゃないだろうか。充分な収入もあって、幸せな家庭も築けて、仕事を好きなことができて、なんて物理的にも精神的にも充実した生活は望むだけ無駄だろう。それも基準に据えるから「不安」が大きくなる。どれかがあればいいだろう・1/Nだけでも得れればもう大満足だろう。

 

年金だって、そもそも「定年」という概念があるからであって、多分、自分らの世代は一生働き続けることになる。であれば「細く長く」稼ぐ為に残業して心も体も酷使している場合ではないし、仕事の付き合いだけが人生ではなくなってくる。嫌々なら自分の時間を仕事に捧げるべきではない。そう考えると今後は正社員でも「兼業」という働き方が早くスタンダードになってほしい。人材を囲い込むような働き方はいずれなくなって行って、多様な仕事から少しずつの収入と仕事に必要はノウハウを学んでいくようになるのだろう。その方が楽しそうだし、さっさとそうなってほしい。

 

この2冊を読んで、「へぇ、そうなんだ」としか思えない自分は残念な人間なのか。もちろん読み物としては楽しいし、そうなるんだ、と知識として把握しておくことは絶対大事だけど。

 

でも、やりたいことをやるべきだ!と言われても何していいかがわからないしね。やりたいことは家でダラダラすることだよね。

 

この、なるようにしかならないよね、という考えのうちはきっと選挙に行かないし、政治にも経済にも仕事にも興味が持てないのだろうな。逆に若い人たちでどういう人たちが選挙に行っているのだろう?

 

人生が壮大な暇つぶしにしか思えない。