VIP

毎年一回、取引先のVIPを呼んで「勉強会」と題した立食会を行う催しの接客対応に駆り出された。

 

場末の一般社員が経営層と相対するのは失礼な気も甚だしいけれど、直属の上司が狙ったかのようにリフレッシュ休暇と題して一週間不在なので、恵比寿のウェスティンホテルへ向かった。

 

事前準備で13:30集合。15:00から勉強会が始まり、立食対応は17:30から。

 

接客対応員は17:00集合で良かったのだが、時間を誤り13:00過ぎには恵比寿に到着してしまった。ただホテルの控室で待っているのも勿体無いので、恵比寿と目黒の間をふらふらと散歩することに。

 

今日はとにかく快晴で、マフラーを巻いて歩いていると首元が汗ばんでくる位に天気が良い。恵比寿〜目黒間は山手線も高架ではなく地面を走っているので、線路を傍に勾配のある恵比寿駅周辺から目黒三田通りに抜け、また勾配の激しい目黒駅前の権之助坂を下っていく。

 

The xxを聴きながら歩いていたのだが、鼻歌ははずみ、浮かんだフレーズを次から次に録音したくなってくる。恥ずかしい話、幾つかレオニダにもリフだったりフレーズだったり提供しているのだけど、大体良い物が浮かぶのは散歩している時で、坂道を歩きながらiPhoneの録音機能に声を入れていたのを後で聞いたら、息が途絶え途絶えになっていてなんだか良く分からなかった。iPhoneのスピーカー部分を口に近づけて歌いながら散歩しているスーツ姿のおじさんて、良く見たら変な人ですよね。いや、一瞥しただけでも変な人ですが。

 

恵比寿〜目黒間は駅前を外れれば昔ながらの民家が多く、その中にぽつりぽつりとスタイリッシュな家具屋や雑貨屋、カフェが並ぶ。

 

こんな場所に職場があったら、通勤するだけで毎日が楽しいだろうな、とつい期待してしまう。

 

結局、鼻歌をぼそぼそと口ずさみながら似たような場所を何回もぐるぐるした挙句、90分程歩いてしまった。その後の接客対応で飲んだ酒が美味いこと。

 

VIPのおじさま方も元は新卒の一般社員からスタートしたサラリーマン社長。「社外」と接している手前、とても気さくで社交的、皆さまとてもやり手なのだろうという気概は話している節々から感じられた。どんなに気を使っても、とても歴戦の猛者たちには勝てそうにないので、終始向こうのペースに甘えさせて頂き色々な話をお伺いした。

 

社長だろうと場末のペーペーだろうと同じ人間。

 

「60歳になると立食で1時間立ってる事自体がしんどいんや」

 

水割りを飲みながらそう仰ってくださった気さくな社長の言葉が耳に残った。