ムコさんとツマさん

ちょうど1年前。

 

小説を読むのは楽しいと、西加奈子が書いた『サラバ』は思い出させてくれた。文庫版が発売された頃だった。

 

サラバ! 上 (小学館文庫)

サラバ! 上 (小学館文庫)

 

 

家族と、恋人と、友達と。

 

普段から何気なく接する身近な知り合いとの生活は日常にありふれている。その「ごく普通」がどれだけ温かく幸せに充ち満ちているかを描くところに西加奈子の凄さがあると思える。

 

『サラバ』もそうだった。

 

エジプトに赴任する幸せな家庭に育った主人公一家が日本に帰って来て生活を始めるところから、徐々に徐々に普通の幸せを擦り減らしていく。大黒柱に一度寄生したシロアリが少しずつ木を蝕み、家が中から崩れていくかのように。気付かぬあいだに。見えない所から。少しずつ。

 

でも最後には幸せを見つける。

 

日常の中に。

 

幸せはこれまで生きて来た日々に普通に転がっていたのだ。

 

見つけた後は元に戻る。

 

試練が起きて、不幸が襲っても、何が起きたか、元に戻って。その一連の過程が西加奈子の描く物語の醍醐味だ。だから読み終わった時にホッとする。ほんのりと暖かな温もりを感じる。

 

今回読んだ『きいろいゾウ』もそうだった。

 

田舎に越した小説家の旦那ムコさんとその妻ツマさんの日常のお話。お隣のアレチさん、野良犬のカンユさん、東京から来た大地くん。まるでサウンド・オブ・ミュージックみたいに鮮やかなで穏やかな2人を取り巻く田舎の日常。このまま何もなく物語が終わるのかと思ったら、最後に筆者はムコさんツマさん夫妻に試練を与える。

 

試練は辛いけれど大丈夫。お互いを信じていれば大丈夫。

 

そうしてまた穏やかな日常に戻る。だって日常を穏やかに生きることが1番幸せなのだから。

 

きいろいゾウ (小学館文庫)

きいろいゾウ (小学館文庫)

 

 

女々しいかな、女性が描く物語の方が現実に寄り添っている。西加奈子しかり、江國香織しかり、川上未映子しかり。日常の当たり前にチラっと過ぎる不幸と絶望。描き方は違えど誰にでも訪れそうで実態のない非日常を物語の中で垣間見るのが好きだ。男性の方が夢想家で、女性の方が現実主義なのだろうか。

 

そんなことは物語が面白いと思えればどうでもいいことなのかもしれないね。