くるりのこと。

 

くるりのこと

くるりのこと

 

 

バンド結成20周年を迎えたくるりが、自分たちの歴史をインタビュー形式で具体的にまとめて欲しいと、彼らを十数年間追っているライター宇野維正に頼んで出来上がった一冊。

 

くるりは06年と10年にベスト盤を出しているが、これも自分たちでレコード会社に直訴してリリースしたそう。ベスト盤てレコード会社の意向で出されることが多いのに、彼等は自分たちのタイミングで、節目を大切にしているぽい。そんな趣旨が本の中でも語られていた。

 

読んだ感想としては、20年も第一線で音源を作り続けるてのは凄いことだなーのひと言。

 

くるりが他のバンドと違って面白いのは、ギタボ岸田とベース佐藤以外のメンバーが流動的なこと。先に読んだデヴィッド・ボウイもそうだったけど、楽器隊を変えると、アレンジが顕著に変わるから、作るアルバムによって音楽のジャンルに多岐に渡る。

 

例えば、初期の「図鑑」ではシンプルなオルタナティブロックだし、「the world is mine」や「NIKKI」では本人たち曰くちょっとチャラついたエレクトロニカなポップ。「ワルツを踊れ」ではがっつりとクラシックに寄っている。

 

この全く違う中でも芯にある変わらないくるりっぽさが上手く融和して20年のキャリアを積み上げてる。

 

特に驚いたのは、この本が上梓された当時の最新アルバム「THE PIER」では楽器を弾かずに作曲してる点。MIDIを使って打ち込みとアレンジする事でより合理的かつクリアに音を紡ぐことが出来たそうだ。記号で表せられるからメロディは感覚的でありつつ無駄がない。

 

それと、09年「シャツを洗えば」を共作したユーミンの作曲へのスタンスにも驚いた。

 

この曲はGAPとのタイアップが最初にあったそうで、岸田はユーミンから作詞を徹底的に直されたのだそう。

 

『少なくともクライアントからもらった仕事をやるには、ドラマの脚本を書くように歌詞を書いた方がいい』っていうことを言われて。つまり、登場人物を設定して、その人たちが曲の中でどうなっていくのかってことを、ちゃんと脚本を書くようにストーリーにしなさいと。で、それをわかりやすく、歌の中でしっかり韻を踏みながら、歌にしていくのがタイアップ・ソングだって。あと、『これはGAPのCMソングで、GAPはカジュアルなファスト・ファッションのブランドだから、サビは絶対に英語がいい』とか。 

 

普段仕事をしているからだろうか。ユーミンのような理路整然とした作曲感覚は凄く共感出来る。相手あってのものだから当然だよなぁって。最も岸田はそこまで割り切れないと感じてたようだが。

 

感覚的でありつつ、それをビジネスとして生活している以上、やっぱりリスナーやクライアントに耳を傾けて聴きやすく寄り添う姿勢てのは大事だと思う。アマチュアでも相手あっての、聴く人あっての音楽だから。まったく無視して好きな事ってのはちがうなぁと。

 

個人的にくるりの音楽自体はそれこそ十数年間聴き続けてるから、あの曲がこーやって出来たのかとか、あの時バンドはこんな状態だったのねとか、岸田にスポットが当たりがちなくるりの中でもベースの佐藤の狂気性があるからバンドとして成り立ってるのね、とか、音楽だけ聴いてたら解らないくるり因数分解して分かりやすくパーツを説明してくれた本だった。古本屋で雑多に置かれている中から選んだのだが、とても良い出会いが出来た一冊だ。僅かに2日でばぁーっと集中して読めた。面白かった証拠だ。

 

個人的に好きなくるりのアルバムを挙げるとすれば、「ワルツを踊れ」と「Philharmonic or die」の2枚かな。とにかく洗練されたクラシカルなくるりが聴ける。後者はそのライブ版。

 

ブレーメン」が最高にメロウ。

 

2拍毎にコードが変化するサビ。3拍子のワルツからマーチへと一気にリズムが変わるアウトロ。展開が複雑な分、ロックやブルースっぽいギターを乗せられる隙間が少ないが、逆にピアノやストリングスが幅を利かせられる。それがまた情緒的かつどこか懐かしみが感じられ、欧州の片田舎の風景を漂わせる。しかも敬虔なのにマイナー感はない。

 

褒めすぎなくらい褒めてるな自分。

 

 

でも、そのくらい名曲だ。

 

最新アルバム「ソングライン」はもっとシンプルで牧歌的なロックに立ち返ってるそうなのだ。まだ聴いてないので、これを機会に聴いてみようかなとね。