ファクトフルネス

わたしたちが認識している常識ってのは意外と脆いものだ。

 

だから客観的な事実や数字を用いた統計的なデータとかけ離れてることもある。つまり事実を誤認しているということ。

 

当たり前だと思われている常識には実は隠された真実があるらしい。でも、隠されていると感じているのはわたしたちの認識がおかしいから。世界の事実は常にアップデートされているし、世界は前向きに変化している。

 

例えば、多くの人が、世界は昔よりも怖く暴力的で残酷になっていると考えているらしい。

 

でも、実際はそんなことはなくて、世界のテロ発生件数は一部の地域を除いて過去最低だし、犯罪で亡くなる人の数も歴史上最も低い値で推移している。だから世界は過去に類を見ないくらい平和になっている。でも、多くの人がそう感じていないのは、マスコミが毎日のように凶悪な犯罪を報道するし、その報道が人間の恐怖やネガティブな感情を触発するから。

 

誤った認識を捨てて、前向きに世界を俯瞰しよう。その為の正しい認識方法を養おう、というのが「ファクトフルネス」の趣旨だった。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

 

公共衛生学を専門としていたハンス・ロスリングという医師が著者である。

 

アフリカの医療を改善させる仕事をしていた中で、世界中の人々が事実を誤認していると気付き、あらゆる定量的なデータを用いてその思い込みの改善に努めようと活動してきたそうだ。

 

その活動をハンスの子息であるオーラとアンナが編纂し、この本を上梓した。シリコンバレーでベストセラーになっていると本屋で宣伝されている中で出会って読んでみたのだが、たしかに納得できる内容だった。

 

先程の例と同じように、アフリカの人々がいつまでも貧しく、世界は「途上国」と「先進国」に分断されていると思われているが、実際は世界の8割以上の地域は「中間層」で、世界は既に2つに分断されていない。1日の所得から分類すれば最貧民層は1割にも満たないし、残りの9割はもはや貧しくはない。世界中の8割以上の子どもは予防接種を受けられるし、好きな時に電気も使用出来る。

 

この誤認は人間は本質的に物事を二律背反で比較してしまう「分断本能」という能力のせいらしい。このような先天的な本能は他にも9ヶあって、

 

  1. ネガティブ本能
  2. 直線本能
  3. 恐怖本能
  4. 過大視本能
  5. パターン化本能
  6. 宿命本能
  7. 純化本能
  8. 犯人捜し本能
  9. 焦り本能

 

が該当する。

 

詳細は本に書いてあるとしても、この10ヶの把握の仕方で物事を一面的に判断し「そういうものだ」と決めつけてしまうことは多い。

 

でも実際には現実の出来事はもっと複雑で多面的だから、やみくもに決めつけて進めていく事だけに視野が向けられている状況は注意すべきだと再認識させられる。それがわかっただけでもこの本を読んだ意味はある。せっかちな人間は特にそう。先天的な本能に従ってパパッと決めつけてしまう癖があるから。

 

それに先述した世界の貧困率の他にも、生活習慣は宗教や文化ではなく所得で決まる点や、目立つリーダーだけが世の中を革新に導いている訳ではなく、その後ろの社会基盤やシステムに着目すべき点などは、常に認識しておいた方が正しく物事を判断できる材料になると感心した。

 

悪くなったり、良くなっているだけではない。悪いと良くなっているが両立する。

 

あやふやな過去の記憶は美化されるから、数値とその差を元に結論を出すべき。

 

常識と異なる真実を把握し人にそれを認識させることは難しいことだけれども、はじめから偏見を持たず中立的な頭で物事を認識する事を始める。

 

社会に出て大人になって、年齢と共にどんどん考え方が凝り固まっていく社会人にとって、一度立ち止まって整理してみるべき事柄があるんだなと気付かせてくれた書籍だった。